「就労移行支援って、デメリットないの?」
事業所の公式サイトを開くと、並んでいるのは前向きな言葉ばかりです。「スキルが身につく」「就職率○%」「定着支援あり」。たしかに良い制度なんだろう、とは思う。でも、そのキラキラした文言の裏にあるリスクや落とし穴は、誰も教えてくれない。
あなたがこの記事にたどり着いたのは、きっと「利用して後悔したくない」からですよね。
わかります。私もそうでした。
一般雇用で心身を壊し、「もう無理だ」と退職を決めた後、就労移行支援事業所の存在を知りました。障害者手帳を取って、藁にもすがる思いで利用を決めたんです。でも――入所してから、聞いていなかった条件が次々に出てきました。
「個別にプログラムを組みます」と言われていたのに、組まれなかった。就職活動で使える求人はハローワークのみだと、入所後に知らされた。系列の求人サービスを使えるのは「通所3ヶ月以上の人だけ」。人間関係でも躓いて、最終的に退所を選びました。
次の事業所を探しました。でも「最低でも3ヶ月は通ってほしい」「前の事業所の利用期間はうちでは引き継げない」と言われ、面談を重ねてもOKは出ない。残っている時間を数えて、泣く泣く事業所の利用そのものを諦めました。
あの時、デメリットを正しく知っていたら。見学の場で、あと4つだけ質問できていたら。結果は違っていたはずです。
この記事では、就労移行支援の「本当のデメリット」7つと、それぞれの具体的な対処法を、事業所選びでつまずいた経験者の目線で書きます。先に結論を言っておきます。デメリットの半分は、入所前の質問で潰せます。潰せない残り半分も、先に知っていれば計画に織り込めます。
デメリットを知っているあなたは、知らないまま飛び込む人より何歩もリードしています。私の遠回りを、あなたはショートカットしてください。
- 就労移行支援のデメリット7つと、それぞれの具体的な対処法
- 「通えば就職できる」が成り立たない理由(公的データで確認できる事業所ごとの差)
- 収入ゼロの期間をどう乗り切るか(アルバイト許可・交通費・利用料の現実)
- 私が入所後に後出しされた「使える求人はハローワークのみ」という条件
- デメリットと引き換えに手に入るもの(メリット5つ)と、向いている人・向いていない人
- 見学前に確認したい4つの質問と、転職エージェント併用という選択肢
記事内の比較表へ移動します
先に結論だけ知りたい方へ。
私が後悔した原因は、見学の場で条件を確認しなかったことでした。
あのとき聞いておくべきだったことを、10個の質問テンプレートにまとめたのが次の記事です。

就労移行支援とは?30秒でわかる基本のしくみ
まずは基本を簡潔にまとめます。「もう知ってるよ」という方は読み飛ばしてOKです。
就労移行支援とは、障害や難病のある方が一般企業への就職を目指すための訓練・支援を受けられる障害福祉サービスです。ビジネスマナー、PCスキル、コミュニケーション訓練、面接練習など、就職に必要なスキルを身につけながら、生活リズムの安定化や自己理解の深化もサポートしてもらえます。
重要なのは、就労移行支援は「訓練の場」であり「働く場」ではないということ。ここが就労継続支援との大きな違いであり、デメリットが生まれる根本的な理由でもあります。
| 項目 | 就労移行支援 | 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 |
| 目的 | 一般企業への就職を目指す訓練 | 雇用契約のもとで働く | 雇用契約なしで働く |
| 利用期間 | 原則2年(更新は自治体審査) | 制限なし | 制限なし |
| 賃金・工賃 | なし | 平均賃金 月額86,752円 (令和5年度) | 平均工賃 月額24,141円 (令和6年度) |
| アルバイト | 原則禁止 (自治体判断で例外あり) | 事業所・自治体による | 事業所・自治体による |
| 利用料 | 3サービス共通の仕組み。世帯収入で上限が決まり、約9割の人が0円 | ||

え、就労移行支援って給料出ないの!? お金もらいながら訓練できるんだと思ってた…



そう、ここが一番大きなポイントです。就労移行支援は「訓練を受ける場所」であって「働く場所」ではありません。だからこそ、利用前にデメリットを知っておくかどうかで結果が変わるんです。
就労移行支援のデメリット7つ【経験者が正直に書きます】
ここからが本題です。就労移行支援には確かにデメリットがあります。でも、知っていれば回避できるもの、対処法があるものがほとんどです。「デメリットの存在」そのものよりも、「デメリットを知らずに飛び込むこと」のほうがよっぽど危険です。
1つずつ、私の体験を交えながら書いていきます。
①利用期間は原則2年。延長できている人は1割に届かない
就労移行支援の利用期間は、原則として最長2年間です。
「2年もあれば余裕でしょ」と思いましたか? 私もそう思っていました。でも、この2年は想像以上にあっという間です。
通所に慣れるまでに1〜2ヶ月。体調を安定させるのに数ヶ月。訓練プログラムを本格的にこなして、就職活動を始めて、内定をもらうまで。実際、就労移行支援を経て就職した人の平均利用月数は15.9ヶ月です(平成29年度・n=2,023事業所)。1年半弱が平均だと考えると、余白はそれほど多くありません。
しかも、事業所が合わなくて途中で変える場合、退所手続き→新しい事業所探し→見学→入所手続きで1〜2ヶ月がさらに消えます。
「合わなかったら延長すればいい」と考えている方へ。同じ資料には、利用者36,607人のうち2年以下が93.5%、2年超3年未満が5.9%、3年超は0.5%と書かれています。延長を使えている人は1割にも届きません。しかも3年目の更新は自治体ごとに判断のバラつきがあり、ニーズがあっても使えないという意見が同じ資料に載っています。延長はあくまで例外だと思っておいたほうが、計画は安全です。
私の場合、もともと個人的な事情で就職したい時期が決まっていました。最初の事業所でつまずき、次の事業所からも「最低3ヶ月は通ってほしい」と言われたとき、残りの日数を数えてスマホを持つ手が震えたのを覚えています。2年は長い。でも、間違えたときに取り返せるほど長くはない。
通所から就職までの流れは、【平均15.9ヶ月】就労移行支援の期間と就職までのリアルな流れで月単位のモデルケースにしてあります。2年の使い方をイメージしてから決めたい方はそちらへ。
- 「いつまでに就職したいか」を先に決めてから事業所を選ぶ。逆算しないと、2年あっても足りなくなる
- 見学は複数回る。比較対象がないと、その事業所の説明が丁寧なのか雑なのか判断できない
- 合わないと感じたら早めに判断する。我慢して通い続けるほど、残り時間が削られる
②通所中は給料も工賃も出ない
就労移行支援に通っている期間中、給料も工賃も一切支払われません。
就労継続支援B型なら平均工賃が月額24,141円(令和6年度)、A型なら雇用契約を結ぶので平均賃金が月額86,752円(令和5年度)。金額の大小はさておき、「通うことで収入がある」のと「完全にゼロ」なのでは、精神的な重さがまるで違います。
なぜ就労移行支援では工賃が出ないのか。理由はシンプルで、ここが「作業をする場」ではなく「就職するための訓練を受ける場」だからです。あなたは労働者ではなく、訓練生。だから対価は発生しません。
理屈は分かっていても、実際に収入ゼロの生活が続くとジワジワ効いてきます。「自分は何も生み出していない」。そんな気持ちが夜に湧いてくるんです。特に一人暮らしの方にとっては、生活費の確保が通所を続けられるかどうかの分岐点になります。



貯蓄を切り崩しながら通うのって、精神的にかなりきつそうですね…。生活費はどうやって確保すればいいんですか?



障害年金を受給できる方はそれが軸になります。失業保険や傷病手当金、生活保護との組み合わせもある。大事なのは「通所を始めてからお金に困る」のではなく、利用開始前に生活費の見通しを立てておくことです。
- 利用開始前に「通所中の生活費」をシミュレーションする。障害年金・失業保険・傷病手当金・貯蓄・家族のサポートなど、使えるものを全部書き出す
- 通所期間の目標を具体的に決める。「◯ヶ月目までに就職活動を開始する」とゴールから逆算する
- 経済面が不安なら、自治体の障害福祉課に相談する。自立支援医療や家賃補助など、知らなかった制度が見つかることもある
使える制度を一つずつ確認したい方は、【知らないと損】就労移行支援のお金の不安を解消する6つの方法と節約術に、障害年金・失業保険・傷病手当金の条件と金額をまとめてあります。
③原則アルバイト禁止。収入ゼロの期間が続く
就労移行支援を利用している間は、原則としてアルバイトが禁止されています。
「え、なんで?」と思いますよね。就労移行支援は「一般企業で働くことが難しい方」に向けた障害福祉サービスです。アルバイトができるなら「もう働けるのでは?」と判断され、サービスの趣旨と合わないと見なされる可能性がある。それが建前の理由です。
ただし、自治体の判断で例外的に許可が出るケースがあります。私の場合は自治体に相談して許可が出たので、アルバイトをしながら通所していました。
正直に言います。許可が出たからといって楽ではありません。日中は事業所で訓練、夜や休日にアルバイト。倦怠感を抱えたままのダブルワークですから、体調管理が最重要課題でした。シフトを入れすぎて体調を崩したら、本末転倒です。
- まず自治体の障害福祉課に「通所中のアルバイトは可能か」を確認する。判断は自治体ごとに違う。事業所の説明だけで諦めない
- 許可が出た場合も、体調優先で無理のないシフトにする。通所とアルバイトの両立は想像以上にハード
- 許可が出なくても手はある。障害年金、自立支援医療、各種減免制度を組み合わせて生活費を確保する道を探る
許可の条件や、どこまで働くと影響が出るのかは、【経験者が語る】就労移行支援中にアルバイトはできる?許可条件とお金の現実で詳しく書いています。
④交通費・昼食代は自己負担。人によっては利用料もかかる
就労移行支援の利用料は約9割の人が0円ですが、通所にかかる交通費と昼食代は基本的に自己負担です。
「交通費くらい大したことないでしょ」と思いますか? 計算してみてください。往復の電車代が500円だとして、週5日通えば月に約1万円。昼食代が400円ならプラス8,000円。合わせて月に約1.8万円です。収入ゼロの状態でこの出費が何ヶ月も続く。地味に、でも確実に財布を圧迫します。
そしてもう一つ、あまり書かれていない落とし穴があります。利用料の判定は「前年の市町村民税」で決まるということ。つまり、前年まで一般雇用で働いていた人が退職して通い始めると、初年度だけ「一般1」(上限9,300円)になることがあります。
私がまさにそうでした。「9割の人は無料」と聞いて、自分も当然0円だと思い込んでいたんです。収入ゼロで通っているのに、毎月9,300円。金額そのものより、「聞いていなかった」という事実がこたえました。



交通費と昼食代で月1.8万、そこに利用料9,300円って…収入ゼロだとキツすぎない? なんとかならないの?



手はあります。自治体によっては交通費の助成がありますし、昼食を無料や安価で出している事業所もある。在宅訓練に対応していれば、そもそも交通費も昼食代もかかりません。どれも見学の段階で確認できることです。
⑤事業所によって支援の質が違いすぎる。通えば就職できる制度ではない
これが、就労移行支援の最大のデメリットだと断言します。
数字を見てください。少し古い資料ですが、厚生労働省の資料では一般就労への移行率が0%――つまり1年間で一人も就職に結びつけられなかった事業所が約3割強。その一方で、移行率20%以上の事業所が約4割とされています。事業所数は全国で約3,300ヶ所です。
同じ「就労移行支援」の看板を掲げていても、中身は別物なんです。就労移行支援は「通えば就職できる制度」ではありません。どの看板を選ぶかで、2年間の中身が変わります。
私が入所した事業所でも、入所してから話が変わりました。「あなたのペースに合わせます」「個別にプログラムを組みます」と説明されていたのに、実際に個別のプログラムが組まれることはなかった。事情を話したうえで「それを考慮して就職まで支援します」とは言われましたが、そこ止まりでした。
公平のために書いておくと、「カリキュラム通りにやれ」と強制されたわけではありません。強制されたのではなく、個別に組まれなかった。この違いは大事です。
「有資格者が在籍しています」という安心材料も、蓋を開けてみればいるだけでした。有資格者がいること自体は嘘ではない。でも、それが支援の質に直結するとは限らないんです。事業所のブログに載っていた「利用者の生の声」も、実際はスタッフ監修で、許可が出ないと掲載されないものだと後から知りました。
あなたもこんな経験はありませんか? ホームページが立派で、見学の印象も良くて、「ここなら大丈夫」と思ったのに、実際は全然違った――そんな話、就労移行支援以外でもよくありますよね。
もう一つ伝えておきたいのが、就職率データの落とし穴です。
「就職率80%以上!」と大きく打ち出している事業所を見かけますが、その数字だけでは何も分かりません。分母は誰なのか(在籍者全員か、就職活動を始めた人だけか)。雇用形態の内訳は何か(正社員・契約社員・パートの割合)。いつからいつまでの実績か。この3つを聞いて即答できる事業所と、「多くの方が就職されています」としか答えない事業所では、信頼度がまるで違います。
私が事業所で味わったことの全部は、【実録】就労移行支援の闇|「やめとけ」「ひどい」の真相と対処法に書きました。ここに書ききれなかった「後出しされた条件」の中身は、そちらにあります。
- 就職率は「分母・雇用形態の内訳・対象期間」まで聞く。この3点を答えられない数字は、判断材料にならない
- 「途中で退所した人がどのくらいいるか」も質問する。就職者数だけでなく、辞めた人の数と理由を聞くと事業所の実態が見える
- 「個別に対応します」は、具体的に何が個別なのかを聞く。私はここを確認しなかった。曖昧な返事なら、その言葉は期待しないほうがいい
- 公式サイトやブログだけで判断しない。体験利用で実際の空気を確かめる
⑥使える求人の経路が、事業所に握られていることがある
これは、私が一番伝えたいデメリットです。そして、上位に出てくる記事でほとんど書かれていないものでもあります。
私が入所した事業所は、就職活動で使える求人がハローワークのみでした。転職エージェントや他社の求人は使えない。この制限は、入所前に一切説明されていませんでした。
さらに、系列の求人サービスを使えるのは「通所3ヶ月以上の人のみ」。入所手続きにも日数がかかりますから、私が就職したい時期までに、その求人情報は実質使えない計算でした。それをスタッフ越しに後出しで伝えられた。応募するにはスタッフの推薦が要ることも、エージェント側から知りました。
どれだけ面接練習が手厚くても、応募できる求人の幅が狭ければ結果は変わりません。減っていく日数と、狭くなっていく入り口。あの時期の私は、焦りで余裕をなくして、怒りっぽくなっていました。関係が悪くなると、通所そのものが苦しくなる。
そしてもう一つ。転職エージェントとの併用そのものを禁止している事業所も存在します。「事業所に通いながら、エージェントにも登録してリスクを分散する」という当たり前の作戦が、ルール上できないことがあるんです。



それって、入所前に聞かないと絶対に分からないやつですよね…。パンフレットには書いてないですし。



そうなんです。だから見学で必ず聞いてください。「就職活動で使えるのは、どこの求人ですか?」「使うのに通所期間や推薦などの条件はありますか?」この2つだけで、私の遠回りはかなり防げたはずです。
- 「就職活動で使える求人はどこの求人か」を入所前に聞く。ハローワークのみなのか、系列エージェントや独自求人があるのか
- 「使うのに条件があるか」まで踏み込む。通所期間の縛り、スタッフの推薦の要否。ここが抜けると、あると思っていた求人が使えない
- 転職エージェントとの併用が可能かを確認する。禁止の事業所もある。併用を考えているなら、入所前にしか確認できない
⑦支援員・他の利用者との相性は選べない。合わないと逃げ場がない
どんなに良い事業所でも、担当の支援員との相性が合わなければ、訓練の効果は半減します。
支援員も人間です。全員と相性が合うわけがない。でも「この人とは合わないな」と思っても、担当変更を申し出るのは心理的にハードルが高い。「わがままだと思われるんじゃないか」「面倒な利用者だと見なされるんじゃないか」。そんな気持ちが邪魔をして、合わないまま我慢して通い続けてしまう人がとても多いんです。
私の場合は、スタッフとの相性だけでなく、他の利用者との人間関係でも壁にぶつかりました。事業所という閉じた空間で毎日顔を合わせるからこそ、一度こじれると逃げ場がない。結局、それが退所を決めた理由の一つでした。
退所を告げたとき、引き留められはしませんでした。ネットでよく見る「しつこく引き留められる」とは逆です。それまで話しかけてくれていたスタッフが、何も声をかけてこなくなった。いないものとして扱われた感覚だけが残りました。
退所の手続きでは、誤った案内をされて自治体の障害福祉課まで行き、「それはしなくていいですよ」と担当者に気の毒そうな顔をされました。あの表情は今でも覚えています。
さらに、事業所を変えるときには壁がもう一つあります。前の事業所で使った日数は差し引かれるのに、通所期間の積み重ねは新しい事業所で一からになる。前の事業所で揉めた経緯を一方的に受け取られて、次の事業所では受け入れに慎重な対応をされることもあります。私は面談を3〜4回重ねても、首を縦に振ってもらえませんでした。
- 見学・体験利用の段階でスタッフの接し方を観察する。あなたへの対応ではなく、すでに通っている利用者への接し方を見る
- 合わないと感じたら担当変更を申し出ていい。これはわがままではなく、利用者として正当な相談です
- 「もし合わなかった場合、退所の手続きはどうなりますか?」を入所前に聞く。聞きにくい質問ほど、答え方に事業所の姿勢が出る
今まさに「辞めたい」と思っている方は、就労移行支援を辞めたい時どうする?退所の手順と辞めた後の5つの選択肢に、退所の進め方と辞めた後に残る5つの道をまとめてあります。
それでも私が「制度そのもの」は否定しない理由|メリット5つ
ここまでデメリットをがっつり書いてきましたが、就労移行支援がダメだと言いたいわけではありません。むしろ、正しく選べば非常に価値の高い制度だと思っています。
事業所選びでつまずいた私が言うのもなんですが、制度そのものを否定したことは一度もありません。問題は制度ではなく、選び方でした。
①生活リズムと体調管理の力が戻ってくる
休職や退職を経験した方なら、「朝起きられない」「外に出る気力がない」という状態を通った方が多いと思います。定期的な通所は、そこから「決まった時間に起きて、外に出て、一定時間活動して帰る」を取り戻すリハビリになります。
地味に聞こえるかもしれませんが、崩れた生活リズムを自力で立て直すのは想像以上に難しい。通う場所と理由がある、というだけで回復のスピードが変わります。
②自分の特性と得意・不得意を客観的に整理できる
「あなたの障害特性は何ですか?」「配慮してほしいことは?」――障害者雇用の面接で必ず聞かれる質問です。これ、一人で考えると意外と答えられません。
訓練やスタッフとのやりとりを通じて、自分の特性を第三者の目で整理する機会が得られます。「この場面で疲れやすい」「この作業は得意だけど、あれは苦手」。それが言葉になると、職場選びの基準が決まり、面接でも配慮事項を具体的に伝えられるようになります。
③就職活動を一人でやらなくていい
障害者雇用の転職活動を一人で進めるのは、孤独で、不安で、わからないことだらけです。履歴書に障害のことをどう書くか。面接で配慮事項をどう伝えるか。就労移行支援では、書類の添削から面接練習、企業とのマッチングまで伴走してもらえます。困ったときに相談できる人がいる。この安心感は大きい。
④就職後の定着支援が受けられる(ここは二段構え)
就労移行支援の隠れた強みがこれです。就職したら終わりではありません。ただし制度が二段構えなので、正確に書いておきます。
就職後6ヶ月までは、利用していた就労移行支援事業所がフォローアップを担当します。その後は「就労定着支援」という別サービスに切り替わり、最長3年間支援を受けられる仕組みです。合わせて3年6ヶ月。職場訪問や面談を通じて、悩みの相談、企業との橋渡し、環境調整のアドバイスを受けられます。
なぜこの制度があるのか。数字を見るとよくわかります。障害者職業総合センターの調査では、一般企業に就職した障害のある方の職場定着率は3ヶ月時点で76.5%、1年時点で58.4%。ただし就職の入り口によって差が大きく、障害者求人で就職した人の1年定着率は70.4%、一般求人で障害を開示した場合は49.9%、非開示だと30.8%です。
さらに同じ調査では、支援機関のサポートを利用して就職した人の1年定着率は65.6%で、利用しなかった人より27.9ポイント高いという結果が出ています。「支援を受けて就職する」ことには、数字で確認できる意味がある。これは正直に伝えたい。
⑤約9割の人が無料で利用できる
利用料は前年度の世帯収入に応じて上限が決まります。約9割の利用者が自己負担なし(0円)で通っています。
| 区分 | 世帯の収入状況 | 自己負担上限月額 |
|---|---|---|
| 生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
| 低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
| 一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満) | 9,300円 |
| 一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
ここでいう「世帯」は、18歳以上なら本人と配偶者だけ。親の収入は含まれません。「うちは課税されてるから無理だ」と諦めてしまう人がいるので、覚えておいてください。
訓練、書類添削、面接練習、就職後のフォローまで含めてこの金額で受けられるサービスは、他にほとんどありません。デメリットはある。でも、コストパフォーマンスは正直すごいと思っています。
就労移行支援が向いている人・向いていない人
デメリットとメリット、両方を見てきました。ここで「自分は利用すべきか」の判断材料を並べます。決めるのはあなたです。
向いている人
- 生活リズムを立て直してから就職活動に臨みたい人。休職・退職後で昼夜が逆転しているなら、まず通所で整えるのが近道
- 自分の特性や得意・不得意を客観的に把握したい人。自己理解が曖昧なまま就職すると、入社後に「こんなはずじゃなかった」が起きやすい
- 就職活動を一人で進める自信がない人。書類の書き方、面接での伝え方、配慮事項の説明を伴走してほしい人
- ビジネスマナーやPCスキルを基礎から身につけたい人。社会人経験が少ない、またはブランクが長い人に効く
- 就職後の定着支援まで受けたい人。新しい職場に一人で適応するのが不安なら、この二段構えは心強い
向いていない人(他の選択肢を検討したい人)
- 生活リズムが安定していて、すぐに就職活動を始めたい人。訓練より求人情報とマッチングが必要なら、転職エージェントを先に検討する道もある
- 十分な職業スキルがあり、必要なのは障害者雇用の求人情報だけの人。訓練の必要がないなら、通所に使う時間がそのまま機会損失になる
- 就職したい時期が決まっていて、そこまでの余裕がない人。私がこれでした。時期の制限がある人ほど、入所前の条件確認が生死を分けます
- 収入ゼロの期間に耐えられる見通しが立たない人。生活費の目処がないまま通い始めると、経済的なストレスで体調を崩すリスクがある
- 体調が安定せず、2年以内の就職が現実的でない人。まずは自立訓練(生活訓練)や就労継続支援で土台を整える選択肢もある
最後の項目に当てはまった方へ。自立訓練と就労移行支援どっちを選ぶ?違い・併用・判断基準を徹底解説で、両者の違いと「先にどちらを使うか」の判断基準を整理しています。



「向いていない」に当てはまったからといって、落ち込む必要はありません。就労移行支援だけが就職への道ではないんです。使わないという判断も、立派な選択です。
デメリットを潰す|見学前に確認したい4つのこと
ここまで読んでお気づきかもしれませんが、就労移行支援のデメリットの多くは「入所前に確認しなかったこと」から発生しています。逆に言えば、先に聞いておけば大部分は潰せる。
このセクションは、私が「あの時これを聞いていれば」と心底思った4つです。デメリット①〜⑦に対応しています。
- ①「就職活動で使えるのは、どこの求人ですか?」
ハローワークのみか、系列エージェントや独自求人があるか。さらに「使うのに通所期間や推薦などの条件はありますか?」まで聞く(→デメリット⑥) - ②「転職エージェントとの併用はできますか?」
禁止している事業所もあります。併用を考えているなら、入所前にしか確認できません(→デメリット⑥) - ③「直近1年の就職率は? 分母と雇用形態の内訳も教えてください」
数字を即答できるか、はぐらかすか。ここに事業所の姿勢が出ます(→デメリット⑤) - ④「もし合わなかった場合、退所の手続きはどうなりますか?」
入る時に出口の話をするのは気が引ける。でも、聞きにくい質問への答え方ほど、その事業所の本音が出ます(→デメリット⑦)
そして、見学は複数回ってください。1ヶ所しか見ていないと、「良い」も「悪い」も判断する基準がありません。比較対象があって初めて、「この事業所は説明が具体的だ」「こっちは質問をはぐらかしている」という差が見えてきます。
ちなみに、私が入所先を決めた理由は「就職したい時期が決まっていることを伝えたうえで、快く迎えてくれたから」でした。歓迎されて、安心してしまったんです。「歓迎されたこと」と「条件が合うこと」は、まったく別物でした。あの時の自分に言ってやりたい。安心する前に、条件を聞け、と。
ここから先は、私が「あのとき知っていれば」と思ったことの全部です。
見学の場でそのまま使えるように、質問のかたちにしてあります。スマホのメモに貼っても、印刷して持っていっても構いません。見学質問テンプレート10選のほか、選び方のチェックポイント7つと、要注意事業所の5つのNGサインも同じ記事にまとめてあります。


自分に合った就労移行支援事業所を見つけよう
事業所選びで一番大事なのは「自分の目で確かめること」。でもその前に、まずは特徴を比較して、見学先の候補を絞りましょう。
デメリットの章で書いたとおり、事業所によって強みはまるで違います。在宅対応、ITスキル、生活リズムの立て直し。あなたが「2年で何を手に入れたいか」に近いところから見てください。
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比較表を見て「ここ良さそう」と思っても、それだけで決めないでください。必ず見学に行って、自分の目と肌で確かめること。表で見る情報と、実際に足を運んで感じる空気は別物です。私が身をもって学んだ教訓です。
事業所ごとの特徴をもっと詳しく比べたい方は、就労移行支援おすすめ事業所を比較!失敗経験者が教える後悔しない選び方にタイプ別の比較をまとめています。
事業所だけに頼らない選択肢|転職エージェントという道
最後に、上位の記事ではほとんど触れられていない話をします。
就労移行支援事業所だけが、障害者雇用での就職手段ではありません。転職エージェントという道もあります。
私は事業所でつまずき、次の事業所にも移れず、最終的に利用そのものを諦めました。正直、あの時は「もう終わりだ」と思った。でも、そこから転職エージェントに切り替えたことが、結果的に私にとっての最善でした。
エージェントは1社に偏らず3社を使いました。エージェントにも「合う・合わない」があるからです。実際、担当者のスタイルも、提案してくる求人の質も、3社とも全然違いました。切り替えてからはルートが明確で、話が早かった。これは事業所にはなかった感覚です。
楽だったわけではありません。何十社も落ちました。書類で落とされ、手応えのあった面接でも不採用が続いた。面接の前日、何度も履歴書を読み返しては閉じて、結局朝まで眠れなかった夜もあります。障害者雇用の選考は、障害特性の理解や配慮、対処方法といったかなり個人的で繊細な部分まで踏み込まれるので、面談の回数も少なくありません。
それでも諦めなかった結果、複数の内定をもらい、年収も希望どおりになりました。内定の連絡をもらった時、電話を切ってから声を出して泣きました。嬉しかったんじゃない。長かった戦いが終わった安堵で、体中の力が抜けたんです。
ただし、正直に書いておきます。その内定は正社員ではなく契約社員です。障害者雇用の正社員求人は、現実的にとても少ない。エージェントから紹介されるのも契約社員や嘱託社員が中心でした。ここを隠して「エージェントなら大丈夫」と書くつもりはありません。少ない中でも戦略次第で道はある。契約社員から正社員登用を目指すルートもある。今の私はそこにいます。
転職エージェントを使うメリットと注意点
- 非公開求人にアクセスできる。一般の求人サイトには出てこない求人がある
- 書類添削・面接対策をプロがサポート。障害者雇用特有の書き方・伝え方を教えてもらえる
- 年収や条件の交渉を代行してくれる。自分では言いにくい条件を、間に入って伝えてもらえる
- 担当者の質にばらつきがある。合わなければ担当変更を申し出ていい
- エージェントもビジネス。あなたを就職させることで報酬を得ている。だから自分の条件は自分で守る意識を持つ
- 事業所に通いながら使えるとは限らない。デメリット⑥のとおり、併用を禁止している事業所もある。通所中の方は、まず自分の事業所のルールを確認してください



事業所もエージェントも、結局は「自分に合うところを選ぶ」のが大事ってことだよね?



その通りです。事業所もエージェントもビジネスでやっています。だから遠慮はいらない。対等に、自分にとって有利な条件を通していい。どちらを使うか、両方使うかを決めるのはあなたです。
エージェントは無料で使えます。まずは登録して話を聞くだけでもかまいません。合わなければ使わなければいいだけです。
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1社だけだと、その担当者の対応や提案の質が「標準」なのか「良い」のか判断できません。私が最終的に納得のいく転職ができたのは、比べられたからです。3社それぞれの違いは、【ぶっちゃけ比較】障害者向け転職エージェントおすすめ3社と失敗談に書いています。
就労移行支援のデメリットに関するよくある質問
- 就労移行支援は本当に無料で使えますか?
-
前年度の世帯収入によりますが、約9割の方が自己負担0円で利用しています。ただし判定は前年の市町村民税に基づくため、前年まで働いていた方が退職して通い始めると、初年度だけ「一般1」(上限9,300円)になることがあります。私がそうでした。加えて交通費や昼食代は基本的に自己負担です。
- 2年以内に就職できなかったらどうなりますか?
-
原則として利用は終了です。自治体に認められれば1年の更新ができる場合もありますが、実際に3年目まで使えている人は0.5%(厚生労働省の資料より)。3年目の更新は自治体ごとに判断のバラつきがあるとも指摘されています。延長を前提にした計画は立てないほうが安全です。終了後は、転職エージェント、ハローワーク、就労継続支援A型・B型など、他の道に切り替えて就職活動を続けられます。
- 就労移行支援に通いながらアルバイトはできますか?
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原則は禁止です。ただし自治体の判断で例外的に許可が出るケースがあります。私の場合は自治体に相談して許可が出たので、アルバイトをしながら通所していました。事業所の説明だけで諦めず、まずはお住まいの自治体の障害福祉課に確認してみてください。
- 事業所が合わなかった場合、途中で変更できますか?
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変更は可能です。ただし、退所手続き→新しい事業所探し→見学→入所手続きで1〜2ヶ月かかることを覚悟してください。前の事業所で使った日数は差し引かれるのに、通所期間の積み重ねは新しい事業所で一からになります。「最低3ヶ月は通ってほしい」と言われることもあります。だからこそ、最初の1ヶ所の選び方が重要なんです。
- 就労移行支援と転職エージェントは同時に使えますか?
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事業所によります。併用できるところもあれば、禁止しているところもあります。私が入所した事業所は、就職活動で使える求人がハローワークのみという制限がありました。併用を考えているなら、入所前に必ず確認してください。入所後に判明しても、時間は戻ってきません。
- デメリットを見ると不安です。利用しないほうがいいですか?
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そこは私が決めることではありません。ただ言えるのは、デメリットの多くは入所前の質問で潰せるということです。逆に、質問しないまま入ると私のように後出しの条件に振り回されます。デメリットを読んで不安になったなら、その不安を4つの質問に変えて、見学の場で全部ぶつけてください。答え方を見れば、その事業所が自分に合うかどうかは見えてきます。
まとめ|デメリットを知ることが、後悔しない第一歩
最後に、就労移行支援のデメリット7つをもう一度振り返ります。
- ①利用期間は原則2年。延長できている人は1割に届かない
- ②通所中は給料も工賃も出ない
- ③原則アルバイト禁止。収入ゼロの期間が続く
- ④交通費・昼食代は自己負担。人によっては利用料もかかる
- ⑤事業所によって支援の質が違いすぎる。通えば就職できる制度ではない
- ⑥使える求人の経路が、事業所に握られていることがある
- ⑦支援員・他の利用者との相性は選べない。合わないと逃げ場がない
デメリットはあります。それは事実です。
でも、就労移行支援の最大のデメリットは、この7つではありません。最大のデメリットは「デメリットを知らないまま事業所を決めること」です。
この記事を読んだあなたは、もうそのリスクを避けられます。デメリットの正体を知っている。対処法も知っている。見学前に聞くべき4つの質問も、転職エージェントという別の道も知っている。
私は事業所選びでつまずきました。退所して、次の事業所にも移れなくて、利用そのものを諦めた。そこからエージェントに切り替えて、何十社も落ちながら、ようやく配慮を受けながら働ける場所にたどり着きました。へこむことも、泣くことも、悔しくてたまらないこともありました。
それでも動き続けたから、今があります。一つダメならもう一つ。何ヶ所も顔を出していると、1つくらい助けてくれるところがある。何の保証もありませんが、私の場合はそうやって沈まずに済みました。
就職がゴールじゃないんです。「配慮を受けながら働き続けられる場所」を見つけるのが、本当のゴールです。



大丈夫です。事業所選びでつまずいた私でも、希望どおりの条件で転職できたんですから。デメリットを先に知っているあなたなら、私よりずっとスムーズにいけるはずです。
デメリットを読んで不安になったなら、その感覚は正しいです。
利用期間は2年しかありません。最初の1ヶ所を間違えると、取り返しがつかない。
だから、見学に行く前にこれだけはやってください。
見学質問テンプレート10選つき






