「就労移行支援 20代」——このキーワードで検索しているあなたに、人生をだいぶ遠回りした40代の私から、最初に伝えたいことがあります。
20代で就労移行支援を使うのは、負けでも甘えでもありません。
同世代はもう普通に働いているのに、自分だけ体を壊して、別のルートに入ろうとしている。「若いのに支援を受けるなんて情けない」「親にも世間にも、甘えるなって言われそう」——そう思って、検索バーに言葉を打ち込んでは消して、なかなか一歩が踏み出せない。その感覚、痛いほどわかります。
私は40代の半ばで、一般雇用の仕事で心身を壊して退職しました。全力で働きたいのに体が動かない。周りの目が突き刺さる。そんな日々に限界が来て、障害者手帳を取り、藁にもすがる思いで就労移行支援事業所の存在にたどり着きました。
でも、最初に選んだ事業所が大ハズレだったんです。見学のときはあんなに親切だったのに、入った途端に話が変わった。人間関係でも躓いて退所を決め、次を探したら「前の事業所の利用期間は引き継げません」という壁にぶつかった。
結局、泣く泣く事業所の利用を諦めて、転職エージェント3社に切り替えました。そこから何十社も落ちました。書類で落とされ、手応えのあった面接でも不採用が続いた。面接の前日、何度も履歴書を読み返しては閉じて、朝まで眠れない夜もありました。
それでも、結論から言います。
最終的に複数の内定をもらい、希望通りの年収で、配慮のある障害者雇用の仕事に就くことができました。
ただし、隠さずに書きます。私の内定は契約社員です。障害者雇用の正社員求人は、現実としてとても少ない。エージェントも契約社員や嘱託社員の求人を含めて紹介してきます。
それでも、希望した年収と必要な配慮を通したうえで働き始めることができました。今は正社員登用を目指しています。
その遠回りを全部やった私が、今、20代のあなたを見て思うことはひとつです。
あなたが持っている「時間」は、40代の私が喉から手が出るほど欲しかったものだ、ということ。
しかも今は、制度の追い風が吹き始めたタイミングでもあります。2026年7月、民間企業の障害者法定雇用率が2.5%から2.7%へ引き上げられました。対象となる企業の規模も従業員37.5人以上まで広がっています。企業が「雇わなければならない人数」は、つい先日一段上がったばかりです。
この記事では、事業所選びで大失敗し、遠回りの末に希望通りの転職にたどり着いた私が、「20代だからこそ使える戦略」をお伝えします。時間の活かし方、「若いのに支援」という罪悪感の手放し方、失敗しない事業所の選び方、通所中のお金と国の制度、転職エージェントの併用術。20代のあなたが知っておきたいことを詰め込みました。
- 就労移行支援の対象年齢と、20代の利用料が「親の収入」で決まらない理由
- 「利用者の最多層は20代」——よく見かけるこの数字を、私がこの記事で使わない理由
- 見学でそのまま使える20代向けの5つの質問(私が聞かずに失敗した「求人の入手経路」を含む)
- 2年を「浪費」ではなく「投資」に変える使い方と、公的データで確認できた事業所ごとの実績差
- 工賃が出ない通所期間の生活費——失業保険・障害年金・親に頼れない人のための制度
- 転職エージェント併用という選択肢と、併用できない事業所があるという現実
記事内の比較表へ移動します
先に結論だけ知りたい方へ。
20代の2年を溶かす原因は、才能でも年齢でもなく、見学の場で確認しなかったことでした。
私があのとき聞いておくべきだったことを、10個の質問テンプレートにまとめたのが次の記事です。

私の遠回りを、あなたはショートカットしてください。
就労移行支援は20代でも使える?対象年齢のど真ん中です
まず、いちばん気になっている疑問に答えます。就労移行支援は20代でも問題なく利用できます。対象年齢は原則18歳以上65歳未満。20代はど真ん中です。年齢を理由に断られることはありません。

えっ、20代で就労移行支援とか早すぎでしょ?まだ若いんだし、普通に働けばよくね?



その「若いんだから」が、実はいちばん危ない思い込みなんです。無理をして体を壊すと、失う時間はもっと長くなる。私がそうでした。
就労移行支援の対象年齢と利用条件
利用するための主な条件は次の通りです。
- 一般就労(企業等で働くこと)を希望していること
- 障害や難病があること(身体・精神・知的・発達障害・難病等)
- 原則18歳以上65歳未満であること
- 適性に合った職場への就労が見込まれること
障害者手帳を持っていなくても、医師の診断書や意見書、自治体の判断で利用できるケースがあります。ただしここは自治体によって運用が変わる部分なので、「手帳はまだ取っていないけど…」という方は、まず自治体の障害福祉課に確認してみてください。
利用期間は原則最大2年(24ヶ月)。市町村審査会の審査を経て延長が認められるケースもありますが、あてにしないほうがいいというのが私の考えです(その根拠になる数字は後の章で出します)。この「2年」をどう使うかが20代にとっては特に重要になるので、そこもじっくり書きます。
「利用者の最多層は20代」——この数字を、私は使いません
「就労移行支援 20代」で検索すると、「利用者でいちばん多いのは20代」「20代が3〜4割を占める」といった数字を載せた記事が出てきます。心強い数字ですよね。正直に言うと、私もこの記事に書こうとしました。「あなたは浮きません」と言ってあげたかったからです。
でも、出典をたどって公的資料を実際に開いてみたら、就労移行支援の利用者を年代別に集計した統計が見つかりませんでした。厚生労働省の審議会資料も、障害者雇用の各種調査も確認しましたが、障害種別や利用期間の内訳はあっても、年代別の内訳はどこにも載っていない。
根拠を確認できない数字を、あなたが人生を決める材料にするのは違うと思いました。だからこの記事では使いません。
代わりに、この記事のいちばん大事な結論を先に言います。
年齢構成は、事業所ごとにまるで違います。だから「全国平均」を調べても意味がない。あなたが通う候補の事業所に、同年代がどれくらいいるかを見学で聞いてください。
20代が中心で、第二新卒や大学中退の人が多く通っているところもあります。逆に、40代・50代が中心で落ち着いた雰囲気のところもある。私が見学した中でも、事業所ごとに空気はまったく違いました。「20代が最多です」という全国の数字より、「あなたが通う教室に同年代が何人いるか」のほうが、100倍あなたの生活に影響します。
聞き方は簡単です。「20代の利用者はどのくらいいますか」「20代の卒業生はどんな職種に就いていますか」。この2つで十分。人数だけでなく進路まで踏み込んで聞くのがポイントです。
「あなただけじゃない」の根拠になる、確認できた数字
年代別の数字はありませんでした。でも、一次資料で確認できた数字はあります。
厚生労働省「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」(2025年6月1日現在)によると、民間企業で働く障害者の数は704,610.0人。22年連続で過去最高を更新しました。内訳を見ると、精神障害のある人が168,542.0人で、対前年比11.8%増と伸びが一番大きい。
つまり、一般雇用で心身を壊して、配慮のある働き方に切り替える人が、それだけ増えているということです。私もその一人でした。あなたも、統計に載るくらいたくさんいる人たちの一人です。「自分だけがルートを外れた」わけじゃない。
利用料——20代は「親の収入」では決まりません
「通うのにお金がかかるんじゃないか」「実家暮らしだと親の収入で高くなるんじゃないか」。この不安、20代からいちばん多く出るところだと思います。
ここは知っておいてください。18歳以上の障害のある人の場合、利用料の判定に使う「世帯」は、本人と配偶者だけです。親と同居していても、親の収入は判定に入りません(施設入所中の18・19歳の方は例外)。
つまり、収入のない20代が実家から通う場合、多くは「低所得」区分にあたって自己負担0円になります。区分は次の通りです。
| 区分 | 世帯の収入状況 | 自己負担上限月額 |
|---|---|---|
| 生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
| 低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
| 一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満) | 9,300円 |
| 一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
注意点がひとつ。判定に使うのは前年の所得です。だから前職の給料があった年に通所を始めると、初年度だけ「一般1」(上限9,300円)になることがあります。収入がない状態が続けば翌年度から非課税世帯に切り替わって0円になるケースが多いので、「最初の1年だけ負担が出るかもしれない」と見込んでおくと計画が立てやすいです。
ただし、交通費と昼食代は基本的に自己負担です。毎日のことなので地味に効いてきます。自治体によっては通所交通費の助成制度があるので、ここも障害福祉課で確認してください。お金の話は20代にとって切実なので、後半の章でもっと踏み込みます。
【本音】20代で支援を受けるのは「負け」じゃない。時間を活かす戦略だ
ここからは、制度の説明より大事な「本音」の話をさせてください。
結論から言います。20代で就労移行支援を使うのは、敗北でも甘えでもありません。「時間」という最大の資産を活かすための、戦略的な立て直しです。これは慰めで言っているんじゃない。遠回りした人間が、心の底からそう思っているんです。
40代の私が、20代のあなたを本気で羨ましいと思う理由
正直に言います。私は、20代のあなたが羨ましい。
私が体を壊して、手帳を取って、事業所で失敗して、エージェントに切り替えて、何十社も落ちて、やっと一社にたどり着くまでの道のりは、本当に重かった。「ここで失敗したら、もう後がない」というプレッシャーが、常に背中に張りついていたんです。転職サイトの不採用通知を開くのは、いつも深夜でした。誰にも見られたくなかったから。
もし私が20代でこの制度を知っていたら——と何度も思いました。やり直しの利く年齢で、時間にまだ余裕があって、失敗しても経験値に変えられる。その状態がどれだけ恵まれているか、40代になって心底わかりました。あなたが「時間を無駄にしたくない」と焦っているその時間こそ、私が一番欲しかった武器なんです。
20代の失敗は、多くが「経験値」に変わります。40代の失敗は、ときに「取り返しのつかないロス」になる。この差は、本当に大きい。だからこそ、あなたにはその時間を正しく使ってほしいんです。
「若いんだから甘えるな」の正体——その圧に潰されるな
20代のあなたを縛っているもの。それは制度の難しさじゃなくて、「若いんだから、甘えるな」という声じゃないでしょうか。親から、世間から、かつての同級生から。そして何より、自分自身の中から聞こえてくる声。
でも、考えてみてください。「甘えるな」と無理をして、また体を壊して、次の職場でも潰れたら——その方が、よほど多くの時間と心を失います。私がまさにそれをやりかけた人間です。復職しても職場で孤立して、倦怠感を抱えたままフルタイムを続けて、結局もっと大きく崩れました。
支援を受けるのは、甘えじゃありません。再発を防いで、もう一度ちゃんと立ち上がるための「立て直し」です。一度しゃがんで足場を固めることは、逃げじゃない。長く走り続けるための準備なんです。



つまり、今ここで焦らずに土台を作るほうが、結局は遠回りにならないってことですね。



そういうことです。ただし「焦らない」と「何もしない」は別物です。土台を固める作業を、期限を決めてやる。ここを混同すると2年が溶けます。
就職がゴールじゃない。「働き続けられる場所」を作るのがゴール
もし、あなたが一度(あるいは何度か)一般就労で潰れた経験があるなら、これだけは覚えておいてください。就職はゴールじゃありません。
焦って次の職場に飛び込んで、また同じように潰れて辞める。これを繰り返すのが、20代にとって本当に怖いことなんです。大事なのは「就職する」ことじゃなくて、「配慮を受けながら、働き続けられる場所」を見つけること。
これは精神論ではありません。数字にも出ています。障害者職業総合センターの調査研究報告書No.137(2017年公表)によると、ハローワークの職業紹介で就職した人が1年後も働き続けている割合は、求人の種類でここまで違います。
| 入り方 | 1年後の職場定着率 |
|---|---|
| 障害者求人(配慮あり) | 70.4% |
| 一般求人・障害を開示 | 49.9% |
| 一般求人・障害を非開示 | 30.8% |
障害者求人で入った人と、隠して一般求人で入った人とで、1年後に残っている割合が倍以上ちがう。同じ調査では、支援機関などの支援制度を利用して就職した人の1年定着率は65.6%で、利用しなかった人より27.9ポイント高いという結果も出ています。
「隠して頑張る」で潰れた経験があるなら、この数字は覚えておく価値があります。20代のうちにこの「働き続けられる型」を手に入れられたら、その後の数十年のキャリアが、まるごと変わります。就労移行支援は、その型を作るための場所です。自分の特性を知り、どんな配慮があれば働けるのかを言葉にし、生活リズムを整える。この準備期間を持てるのが、20代の強みなんです。
20代が就労移行支援を使う5つのメリット——「即戦力」じゃなく「伸びしろ」で戦う
20代には、40代の私にはない強みがあります。それを正しく認識して武器にすることが、就職成功のカギです。ポイントは、「即戦力」で勝負しないこと。20代は「伸びしろ・吸収力・やり直しの自由」で戦えます。具体的に5つ挙げます。
① 体力・吸収力が高く、スキルを一から積める
新しいPCスキルやビジネススキルを吸収するスピードは、20代の強みです。事業所で学んだExcelやビジネスメール、報連相の型が、その後の長いキャリアで複利のように効いてくる。40代から学び直すのと、20代で土台を作るのとでは、回収できる年数がまるで違います。同じ訓練でも、20代が受けるほうが投資効率は高い。
② キャリアの方向転換が何度でも効く
20代は「やってみて、合わなかったら方向を変える」が許される年齢です。これは本当に大きい。
40代の私が方向転換をするのは、正直、命がけでした。一回の選択ミスが致命傷になりかねない。でも20代のあなたは、もっと身軽に試せます。事務職が合わなければIT系に、対人が苦手ならバックオフィスに——軌道修正の余白がある。この「やり直せる自由」は、20代が持つ強いカードのひとつです。
③ 自己理解を「早い段階で」手に入れられる
自分が何が得意で、何が苦手で、どんな環境だと体調を崩すのか。この「自己理解」を20代のうちに手に入れられると、その後の職業人生がぐっと安定します。
就労移行支援には、自己分析やアセスメントのプログラムがあります。一人で悩んでいても堂々巡りだった「自分の取扱説明書」を、スタッフと一緒に言語化できる。私が何十社も落ちた原因を振り返ると、たいていは「配慮事項をうまく言語化できていない」「その会社で何ができるかを具体的に語れていない」のどちらかでした。これは訓練で埋められる部分です。20代でここを固められるのは、かなりのアドバンテージだと思います。
④ 障害者雇用の「枠」は広がっている。ただし就職率は下がっている
ここは、都合が悪いので他の記事があまり書かない部分です。でも書きます。
先に触れたとおり、法定雇用率は2026年7月から2.7%になりました。同じ集計によると、法定雇用率を達成できていない企業は65,033社。そのうち64.0%は「あと0.5〜1人」雇えば達成できる企業で、障害者を1人も雇っていない企業が37,262社あります。企業側に「雇わなければならない事情」があるのは事実です。
ただし、ここで「売り手市場だから楽勝」と書くつもりはありません。厚生労働省「令和7年度 障害者の職業紹介状況等」を見ると、ハローワークへの新規求職申込件数は278,136件で過去最高。一方で就職件数は115,178件(前年度比0.4%減)、就職率は41.4%(前年度から1.7ポイント低下)でした。
つまり、枠は広がっているけれど、応募する人はそれ以上に増えている。競争は緩んでいません。
私はこの数字を見て、むしろ腹が決まりました。若さそのものが自動的に有利になるわけじゃない。入口が広がっているうちに、準備の質を上げた人が通る。20代にとっての追い風は「年齢」ではなく、「準備に使える時間があること」のほうです。
⑤ 生活リズムの立て直しから始められる
引きこもりや在宅療養が長かった人にとって、いきなり週5日の就職活動はハードルが高すぎます。就労移行支援なら、生活リズムの立て直し→スキル訓練→就職活動と、段階を踏んで進められます。
最初は週2〜3日の通所からスタートして、少しずつ日数を増やしていく。朝起きて、身支度をして、決まった場所に通う。この「働くための体と心の土台」を、就職する前に作れる。20代なら、この立て直しに使う時間も確保しやすいはずです。
ただし2年はだらだら使えない——数字で見る「時間の重さ」
ここまで「20代の時間は最強の武器だ」と繰り返してきました。でも、メリットだけ語るのはフェアじゃない。リスクの話もします。
結論はこうです。20代の時間は最大の武器だが、目的なく通えば、その武器はただ鈍る。「時間がある」ことと「だらだら使っていい」ことは、まったく別の話です。
「2年あるから大丈夫」の落とし穴——平均利用月数は15.9ヶ月
まず、この数字を見てください。就労移行支援を経て就職した人の平均利用月数は15.9ヶ月です(平成29年度・n=2,023事業所)。
最初の数ヶ月は体調を整える期間。そこからスキル訓練。就職活動を始められるのは通所から半年〜1年後というケースも珍しくありません。1年半弱が平均と考えると、2年の余白はそれほど多くない。
「延長すればいい」と思うかもしれません。でも同じ資料では、利用者36,607人のうち2年以下が93.5%、2年超3年未満が5.9%、3年超は0.5%。延長を使えている人は1割にも届きません。しかも延長や再利用の判断は自治体ごとにバラつきがあり、ニーズがあっても使えないという指摘が同じ資料に載っています。延長は例外と考えて、2年以内に就職する前提で計画を立てるほうが安全です。
だから、「なんとなく通う2年」にしないでください。通うこと自体が目的になって、「で、自分は結局どうなりたいんだっけ?」が抜け落ちる。これがいちばんもったいないパターンです。事務職に就きたいのか、IT系を目指すのか、在宅で働きたいのか。ゴールが決まっていれば、毎日の訓練が「そのための一歩」に変わります。目的のある2年は投資。目的のない2年は、ただの消費です。
事業所選びで失敗すると、20代でも時間は二重に失われる
ここで、私の失敗をもう少し詳しく話させてください。あなたに同じ道を歩いてほしくないからです。
合わない事業所に入ってしまうと、そこから抜け出すのに時間がかかります。退所を決める→新しい事業所を探す→見学する→入所手続きをする。この一連の流れで1〜2ヶ月は消えます。しかも衝撃だったのが、次の事業所で言われた「前の事業所で使った利用期間は、うちでは引き継げません」という一言。さらに「最低でも3ヶ月は通ってほしい」とも言われました。
ここは正確に書きます。使った利用日数そのものは差し引かれます。でも、その事業所で積み上げた通所期間の実績は、新しい事業所ではまた一からでした。減るものは持ち越されて、積み上げたものはリセットされる。最初の選択を間違えただけで、時間が二重にも三重にも失われていったんです。
もうひとつ。前の事業所で揉めた経緯を一方的に受け止められて、次の事業所では受け入れにかなり慎重な対応をされました。入所したい旨を伝えても、首を縦に振ってもらえない。「辞めれば次に行けばいい」が、そう簡単ではなかった。
退所を伝えたあとのスタッフの事務的な声は、今でも耳に残っています。引き留められもしませんでした。それまで話しかけてくれていた人が、退所の話をした途端に何も言わなくなる。いないものとして扱われた感覚だけが残りました。あの空気を、あなたには味わってほしくない。



え、辞めたら次いけばいいじゃんって思ってたけど、そんな面倒なことになるの?



サポト、それ完全に楽観しすぎだって。使った日数は減ったままなのに、積み上げは一からなんだよ?最初に選ぶところで、もう勝負が半分ついてるってこと。
事業所の「当たり外れ」は、公的データにも出ている
「そんなの、あなたが運が悪かっただけでは?」と思うかもしれません。私もそう思いたかった。でも、データを見てください。
少し古い資料ですが、厚生労働省の資料では一般就労への移行率が0%——つまり1年間で一人も就職に結びつけられなかった事業所が約3割強。その一方で、移行率20%以上の事業所が約4割とされています。事業所数は全国で約3,300ヶ所。
同じ「就労移行支援」という看板でも、中身の差がここまで大きい。あなたの2年がどうなるかは、制度の問題ではなく「どの事業所を選ぶか」の問題です。20代の伸びしろを活かすも殺すも、最初の1ヶ所次第。逆に言えば、ここさえ丁寧にやれば、あなたの2年は投資になります。
20代で支援を受ける”心の壁”——罪悪感・親・障害者手帳との向き合い方
具体的なノウハウに入る前に、もうひとつだけ。20代のあなたが一歩踏み出せない理由は、制度の難しさじゃなくて、「心の引っかかり」のほうじゃないでしょうか。ここをほどいておかないと、どんなに良い情報も前に進む力になりません。
「親に養われている罪悪感」とどう向き合うか
実家暮らしで親に頼っている後ろめたさ。「いい年して、親のすねをかじっている」という自責の声。ここは、多くの20代が抱えるところだと思います。
ひとつ事実を置いておくと、利用料の判定に親の収入は入りません(前の章のとおりです)。つまり、あなたが通うことで親の家計に直接のしかかるものは、交通費と昼食代くらい。ここは冷静に線を引いていい部分です。
親が支援利用に反対している場合は、自治体の窓口や支援機関、主治医など、第三者を一緒に頼るとスムーズに進むことが多いです。親世代には制度そのものが知られていなくて、不安から反対しているケースもある。あなた一人で説得しようとしなくていい。
家庭環境が悪い、親と関係が切れている、そもそも頼れる家族がいない——そういう20代も、決して少なくありません。あなたを支える手段は、家族だけではありません。国の制度があります。失業保険・障害年金・生活保護・グループホームなど、家族に頼らず生活を立て直す方法を、この記事の後半「お金」の章で具体的に書きます。一人で抱え込まないでください。
「20代で障害者手帳を持つこと」への抵抗感
若くして障害者手帳を取ることが、「普通の人生から外れる」ように感じる。このアイデンティティの揺らぎは、20代ならではの重い悩みだと思います。
私の考えを書きます。手帳は「レッテル」ではなく、配慮を受けて働き続けるための「道具」です。手帳があることで障害者求人に応募できたり、税の控除や各種割引が受けられたりする。使える権利が増えるだけで、あなたの本質が変わるわけじゃない。
取得を急かすつもりはありません。手帳を取るかどうかは、自治体や主治医に相談しながら、あなたのペースで決めていい。ただ、「持っていれば選択肢が増える道具」だという事実は知っておいてください。先ほどの定着率の数字を思い出してもらうと、障害者求人という入口を持てるかどうかは、その後の続けやすさに直結します。



でもさ〜、手帳取ったらもう人生終わりって感じしない?なんか後戻りできなくなりそうで怖いんだけど。



逆です。手帳は使える権利を増やす道具です。種類によっては有効期限もあって、精神障害者保健福祉手帳なら2年ごとの更新。状態が変われば等級も見直されます。終わりではなく、選択肢が増える入口だと考えてください。
あなたは「支援される弱い人」じゃない。サービスを使う側だ
最後に、いちばん大事な意識の話を。事業所も転職エージェントも、ビジネスとして運営されています。つまり、あなたは「支援される弱い立場」ではなく、「対等にサービスを利用する側」なんです。
合わない事業所なら、選び直していい。条件を妥協しなければいけない理由もない。これは「わがまま」ではなく、サービスを使う側として当然の判断です。社会人経験が浅いと、つい「指導される立場」だと思い込んでしまいがちですが、その意識は置いてきていい。あなたは、自分に合うものを選ぶ側にいます。この一点を握っているかどうかで、次の章の見学の質が変わります。
20代が失敗しない事業所の選び方——見学前・見学中・見学後
お待たせしました。ここからが、私の失敗から生まれた財産です。事業所選びで後悔しないコツは、たったひとつ。「自分の目で、必ず確かめること」です。そして、複数を比較すること。私は結果的に4ヶ所を見ましたが、最低3ヶ所は見ておくと判断が変わります。
「あの時これを確認していれば」と思うポイントを、見学前・見学中・見学後の3段階に分けます。
【見学前】ネットで調べる段階で絞り込めること
足を運ぶ前に、ホームページの段階で絞り込めることがあります。
- 自分の障害・特性に対応した支援実績があるか
- 訓練内容が自分の就職目標に合っているか(IT系/基礎ビジネス/在宅対応など)
- 就職実績・定着率が「具体的な数字」で公開されているか
- 20代の卒業生の進路が載っているか(載っていなければ見学で聞く)
ひとつ注意を。事業所のブログに載っている「利用者の声」は、そのまま鵜呑みにしないでください。私も最初は生の声だと思っていました。でも実際は、スタッフの監修が入って、許可が出たものだけが掲載される仕組みでした。悪く言いたいわけではなく、そういうものだという前提で読めばいい、という話です。
【見学中】20代が必ず聞くべき5つの質問
見学では、遠慮せずに次の5つを質問してください。対等にサービスを選ぶ側として、当然の確認です。
過去1年で、何人が就職して、何人が今も続いていますか
「多くの方が就職しています」という答えしか返ってこないなら、要注意です。全国では移行率0%の事業所が約3割強ある——という話を思い出してください。実数で答えられるかどうかが、自分たちの支援に自信があるかのバロメーターになります。
就職活動で使える求人は、どこのものですか。転職エージェントとの併用はできますか
私が聞かずに詰んだのがここです。入所してから、使える求人はハローワークのものだけだと知りました。エージェントや他社の求人は使えない。入所前に一切説明されていませんでした。事業所によってはエージェントとの併用そのものが禁止のところもあります。必ず入所前に確認してください。
個別支援計画は、具体的に何が「個別」なんですか。更新の頻度と、本人の要望の反映は?
「あなたのペースに合わせます」「個別にプログラムを組みます」は、多くの事業所が言います。私も言われました。でも実際に個別プログラムが組まれることはありませんでした。言葉ではなく「何がどう個別なのか」を具体的に説明してもらうのが確認の仕方です。
20代の利用者はどのくらいいますか。20代の卒業生はどんな職種に就いていますか
「浮くのが怖い」という不安は、全国平均ではなくこの質問で解消します。人数だけでなく進路まで聞くこと。同年代の卒業生が自分の目指す職種に就いているなら、その事業所にはノウハウがあります。
もし合わなかった場合、退所の手続きと、かかる期間はどうなりますか
入る前に出口を聞くのは失礼ではありません。ここをはぐらかす事業所は、そもそも比較検討されることを想定していない、ということです。
もうひとつ、資格の話も添えておきます。専門の有資格者がいることと、その専門性を実際に発揮してくれることは別問題です。私が通った事業所にも有資格者はいました。でも「いるだけ」で、特別なケアがあるわけではなかった。資格の有無で安心せず、「その方が、実際にどんな支援をしてくれますか」まで聞いてください。
ここから先は、私が「あのとき知っていれば」と思ったことです。
見学の場でそのまま使えるように、質問のかたちにしてあります。スマホのメモに貼っても、印刷して持っていっても構いません。質問テンプレート10選のほかに、選び方のチェックポイント7つと、要注意事業所の5つのNGサインも同じ記事にまとめてあります。


【見学後】比較検討で見落としがちなポイント
見学が終わったら、必ず複数を比較してください。最低3ヶ所をすすめる理由は、1ヶ所だけだと「比べる基準」がないからです。1ヶ所目を見ても、それが良いのか悪いのか判断材料がない。3ヶ所見て初めて「あそこは実数で即答できたのに、ここは濁したな」と差が見えてきます。



見学とか正直めんどくさいし、家から近いとこに適当に決めちゃダメなの?



…サポト、それで合わなくて辞めたら、また事業所探しで振り出しだよ?面倒がって近さだけで決めるのが、いちばん時間を無駄にするパターンなんだって。
- 見学メモは必ずその場で取る(帰りの電車で記憶は薄れる。次の見学と比較できなくなる)
- 通いやすさ(距離・交通費・所要時間)を侮らない。毎日のことだから効いてくる
- 体験利用は遠慮なく使う。半日過ごすと、見学だけでは見えない空気がわかる
- 「ここなら通えそう」という直感も判断材料にする。数字だけでも、直感だけでもダメ。目的 × 相性で見る
「事業所のドアを開けた瞬間、見学のときとは明らかに違う空気を感じた」——これは私が二度と味わいたくない感覚です。だからこそ、見学と体験利用は手を抜かないでください。手間を惜しまないことが、結果的にいちばんの時短になります。
私が最初の1ヶ所で何を見落とし、そこで何が起きたのか。失敗の全容は次の記事に書きました。「ひどい」と言われる7つの理由と、見学で聞く6つの質問をまとめてあります。同じ轍を踏まないために、先に読んでおいてほしい記事です。


自分に合う就労移行支援事業所を見つけて、見学予約から始めよう
事業所選びは、結局のところ「自分の目的・体調・なりたい働き方」に合うかどうかです。在宅訓練に対応しているところ、IT系のスキルに特化しているところ、基礎からじっくり教えてくれるところ——事業所ごとに特色は大きく違います。
大切なのは、複数を比較して、自分に合う一社を見つけること。以下に、特色のある就労移行支援事業所の比較をまとめています。気になったところがあれば、まずは資料請求や見学予約から始めてみてください。見学はもちろん無料です。
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一社だけ見て決めるのではなく、2〜3社を比較してみてください。同じ「就労移行支援」でも、雰囲気もカリキュラムも、使える求人の範囲もまったく違います。あなたの20代という時間を預ける場所です。納得できるところを選んでください。
通所中のお金と、その先の年収——20代のリアルな経済の話
20代にとっていちばん切実なのに、誰もちゃんと教えてくれないのが「お金」の話じゃないでしょうか。通所中の生活費はどうするのか。就職できても年収は低いんじゃないか。ここから目を逸らさずに書きます。
まず前提——就労移行支援に工賃(給料)は出ません
大前提として、就労移行支援は原則として工賃(給料)が出ません。ここが、雇用契約を結んで働く就労継続支援A型や、作業に対して工賃が出るB型との大きな違いです。あくまで「就職に向けた訓練の場」なので、通所してお金がもらえるわけではない。
| 項目 | 就労移行支援 | 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 |
|---|---|---|---|
| 目的 | 一般企業への就職を目指す訓練 | 雇用契約を結んで働く | 自分のペースで作業する |
| 雇用契約 | なし | あり | なし |
| 賃金・工賃 | なし | 最低賃金以上(平均賃金 月額約86,752円/令和5年度) | 平均工賃 月額24,141円(令和6年度) |
| 利用期間 | 原則2年 | 制限なし | 制限なし |
じゃあ通所中の生活費はどうするのか。ここからが本題です。
20代こそ使える「失業保険」——就職困難者は給付日数が長い
前の職場を辞めていて、雇用保険に入っていたなら、まずここを確認してください。失業保険(雇用保険の基本手当)を受給しながら就労移行支援に通えます。
しかも、障害者手帳を持っていると「就職困難者」という区分になり、給付日数が一般の離職者より長くなります。
| 被保険者期間 | 一般の離職者 | 就職困難者(障害者) |
|---|---|---|
| 1年未満 | 90日 | 150日 |
| 1年以上(45歳未満) | 90〜150日 | 300日 |
| 1年以上(45歳以上65歳未満) | 90〜150日 | 360日 |
20代なら45歳未満の300日。約10ヶ月分です。この間、収入を受け取りながら訓練に集中できる。これは相当大きい。ハローワークで手帳を提示して「就職困難者の区分になりますか」と確認してください。知らずに一般区分のまま手続きしてしまう人がいます。
もうひとつ大事なこと。失業保険には「離職の翌日から1年以内に受け取らないと消える」というルールがあります。でも、病気やけがで30日以上働けない状態なら「受給期間の延長申請」ができ、最長4年まで延ばせます。体調を整えてから受給を始める、という順番が組めるわけです。退職したらまずハローワークで「受給期間の延長をしたい」と伝えてください。この一言を知らないまま期限を過ぎてしまう人が、本当に多いです。
アルバイトとの両立は、できる場合とできない場合がある
私の場合は、自治体からアルバイトの許可をもらって、バイトをしながら通所していました。ただし、これは全国どこでもできる話ではありません。原則として利用中の就労は認められておらず、許可を出す自治体は少なめです。
正直に言うと、アルバイトと通所の両立は体力的にかなりきつかった。シフトの数や時間の調整は必須でした。それでも、収入ゼロの不安を抱えながら通うよりはマシだった、というのが私の実感です。
「自分の自治体では許可が出るのか」「どこまでなら働けるのか」は、必ず障害福祉課で確認してください。許可条件と、実際に両立するときの注意点はこちらにまとめています。


親に頼れない人へ——あなたを支える「国のセーフティネット」
ここは、特に強くお伝えしたい部分です。家庭環境が悪い、親と不和、頼れる家族がいない——そういう20代こそ、この制度を知っておいてください。
私自身、当時ケアマネージャーから「グループホームや生活保護を一時的に使って、次の転職の機会を作る」という案を教えてもらいました。自分では思いつきもしなかった選択肢です。これらの制度を使うのは権利であって、恥でも甘えでもありません。一人で抱えず、自治体の障害福祉課や相談支援の窓口に話していい。これは声を大にして言いたい。
| 制度・相談先 | どんなもの? |
| 失業保険 (雇用保険の基本手当) | 前職で雇用保険に入っていたなら最優先で確認。手帳があれば「就職困難者」区分で、45歳未満は最大300日。受給期間の延長は最長4年 |
| 障害年金 | 一定の障害状態にあれば20代でも受給できる可能性がある。令和8年度の障害基礎年金は1級 年1,059,125円(月約88,260円)/2級 年847,300円(月約70,608円)。初診日などの要件があるので年金事務所へ |
| 生活保護 | 収入・資産が一定以下なら、年齢に関係なく利用できる最後のセーフティネット。「若いから受けられない」は誤解。通所と並行して生活を立て直す土台にできる |
| 障害者グループホーム (共同生活援助) | 親元を離れたい・頼れない人が、支援を受けながら暮らせる住まい。一人暮らしへの中間ステップになる |
| 住居確保給付金 ほか (生活困窮者自立支援) | 家賃が払えない、生活の立て直しに伴走してほしいときの窓口。自立相談支援の専門員が一緒に考えてくれる |
| 障害福祉課・ 基幹相談支援センター | 上記をワンストップで案内してくれる、自治体の最初の相談先。何から相談していいか分からなければ、まずここへ |



生活保護とか、若い自分が受けられるわけないでしょ?働けるんだから無理じゃん。



それ、よくある誤解です。年齢で門前払いされる制度ではありません。一時的に立て直すために使うのも、想定されている使い方です。まず生き延びること。立て直しはそのあとで間に合います。
ひとつ注意点を。これらの制度は、対象になる条件・支給される金額・手続きの方法が、自治体やあなたの状況によって変わります。ここに書いたのは概要です。実際に使えるかどうかは、必ず公式の窓口で確認してください。「自分は対象外だろう」と勝手に諦めないこと。窓口で聞いてみたら使えた、というケースは本当に多いんです。
交通費や昼食代の節約、傷病手当金との関係など、お金まわりをもう少し細かく知りたい方はこちらへ。通所中の生活費を確保する6つの制度をまとめてあります。


障害者雇用の年収——正社員は少ない。それでも積み上げる時間が長いのが20代
「障害者雇用=低年収、キャリアの天井が低い」。このイメージを持っている人は多いですよね。ここも正直に書きます。
障害者雇用は、最初から高年収の正社員求人が並んでいるわけではありません。むしろ正社員求人は現実的にとても少なく、契約社員や嘱託社員からのスタートになることも多い。エージェントも、そうした求人を含めて紹介してきます。ここを甘く語る記事は信用しないでください。
でも——少ない中でも、戦略次第で道はあります。スキルと経験を積んで、より条件の良い職場へジョブチェンジしていけば、年収を上げていくことは可能です。そして、20代は「積み上げる時間」が最も長い世代。複利がいちばん効きます。契約社員から入って正社員登用を目指すルートも、確かに存在します。
かく言う私も、最終的に転職を成功させましたが、入口は契約社員での内定でした。今は正社員登用を目指して、配慮を受けながら働いています。希望していた年収には届きました。遠回りした私でもここまで来られた。積み上げる時間が私よりずっと長い20代のあなたなら、もっと遠くまで行けます。最初の一歩の条件だけで、自分の可能性を決めつけないでください。
「障害者雇用の平均年収」の数字をどう読めばいいか、平均に振り回されないための考え方はこちらにまとめました。


就労移行支援だけが道じゃない——転職エージェントという選択肢
ここで、私がいちばん伝えたい戦略の話をします。就労移行支援だけに頼る「一本道」は、リスクがあります。転職エージェントも選択肢に入れて、出口を複数持っておく。これが20代の動き方として現実的だと私は考えています。
これは私の痛い経験から来ています。事業所選びで時間を使いすぎて、就職したい時期までのリミットが迫ってしまった。最終的に事業所の利用を諦めて転職エージェント3社に切り替え、複数の内定にたどり着きました。もし最初から出口を複数持っていれば、あんなに焦らずに済んだはずなんです。
転職エージェントとは?就労移行支援との違い
そもそも、この2つは役割が違います。整理しておきましょう。
| 就労移行支援 | 転職エージェント | |
| 目的 | 訓練・スキルアップを経て就職 | 求人紹介・選考サポートで就職 |
| 期間 | 原則最大2年 | 期間制限なし |
| 費用 | 世帯所得で判定(非課税世帯は0円) | 無料 |
| 向いている人 | スキルや生活リズムの立て直しが必要な人 | 体調が安定していて、すぐ就職活動を始めたい人 |
併用できない事業所がある——入所前に必ず確認を
ここは、この記事でいちばん見落としてほしくないところです。
事業所によっては、転職エージェントとの併用そのものが禁止されています。また、私が通ったところのように使える求人がハローワークのものだけという制限がかかっている場合もあります。そして、どちらも入所前に説明されないことがある。
「両輪で動こう」と決めても、事業所側のルールで片輪が使えなければ意味がありません。併用できるかどうかは事業所によります。確認したうえで、どちらを優先するかはあなたが決めていい。ただ、確認しないまま入るのだけは避けてください。私はそれで詰みました。
エージェントを使うなら、複数社を並行して
私は転職エージェントを3社使いました。1社に絞らなかったのには理由があります。
1社だけだと、そのエージェントが持っている求人にしかアクセスできません。担当者との相性が合わなかったときのリスクも大きい。複数使えば、求人の幅が広がるだけでなく、「A社ではこう言われたけど、B社は別の見方だった」と比較できるようになります。私が3社を併用したからこそ、希望条件を妥協せずに済んだ。1社だけだったら「この条件で妥協しませんか」と言われて、折れていたかもしれません。
担当者との相性も重要です。合わなければ、担当変更を申し出ていい。エージェントもビジネスです。あなたは対等にサービスを利用する側なんですから。
「すぐ就職したい20代」はエージェント先行という選び方もある
もし、あなたの体調が安定していて、生活リズムも整っているなら、訓練より先にエージェントで就職活動を始める道もあります。全員が2年の訓練を受ける必要はありません。
判断の軸は、自分の今の状態です。再発のリスクが残っている、スキルに不安がある、生活リズムがまだ崩れている——そういう場合は、事業所で土台を作るほうが先。逆に、土台はできていて「あとは就職するだけ」なら、エージェント先行で動くという選択もある。大事なのは、自分の状態を正しく見て、使う順番を自分で決めることです。



事業所とエージェント、どっちか片方を選ばなきゃいけないと思ってました。



片方に絞ると決まっているわけではありません。ただし併用の可否は事業所によります。だから見学の場で聞く。順番を決めるのは、確認したあとのあなたです。
私が実際に使った3社の使い分けと、正直な失敗談はこちらにまとめています。
障害者雇用に強い、おすすめ転職エージェント
事業所での訓練と並行できる状況なら、早めに転職エージェントに登録しておくのもひとつの手です(併用可否の確認は忘れずに)。早めに登録しておけば、訓練中に求人市場の情報も入ってきて、いざ就職活動を始めるときにゼロからのスタートにならずに済みます。
以下に、障害者雇用に強い転職エージェント・求人サイトの比較をまとめています。登録はいずれも無料なので、まずは相談してみてください。
![]() ![]() 〉〉詳しくはこちら | 【障害者雇用バンク】 複数の求人を一覧で比較できる使いやすさが特徴。 求人検索→エージェント相談の流れがスムーズで、「まず選択肢を広く見てから決めたい」人に最適。 登録・利用は完全無料。 |
![]() ![]() 〉〉詳しくはこちら | 【dodaチャレンジ】 大手転職サービスdodaが運営。 非公開求人を含む豊富な求人数が強みで、障害者雇用の専任アドバイザーが書類〜面接まで一貫してサポートしてくれる。 大手・安定企業への転職を目指す人に向いている。 |
![]() ![]() 〉〉詳しくはこちら | 【atGP転職サービス】 障害者雇用支援の実績が業界トップクラス。 障害の種類・特性ごとに専門的なアドバイスが受けられ、配慮のある職場への転職成功率が高い。 就労移行支援からそのまま転職活動に移行したい人にも対応。 |
複数のエージェントに登録して、紹介される求人や担当者の対応を比較してみてください。私も3社を使い分けたことで、自分に合うサポートと求人に出会えました。「合わないな」と感じたら、別の担当やエージェントに切り替えていい。主導権はあなたにあります。
20代の就労移行支援に関するよくある質問
- Q. 20代で就労移行支援を使うのは早すぎませんか?
-
早すぎることはありません。対象年齢は原則18歳以上65歳未満で、20代はど真ん中です。「若いから普通に働けるはず」と無理をして再発するより、今しっかり立て直すほうが、結果的に近道になることもあります。ネットでよく見る「利用者の最多層は20代」という数字は、出典を確認できなかったのでこの記事では使っていません。年齢構成は事業所ごとに違うので、見学で直接聞くのが確実です。
- Q. 実家暮らしだと、親の収入で利用料が高くなりますか?
-
なりません。18歳以上の障害のある方の場合、利用料判定の「世帯」は本人と配偶者だけです(施設入所中の18・19歳を除く)。親と同居していても親の収入は入りません。ただし判定は前年の所得で行うため、前職の給料があった年は「一般1」(上限9,300円)になることがあります。翌年度から0円に切り替わるケースが多いです。
- Q. 通いながらアルバイトはできますか?
-
原則として、利用中の就労(アルバイト含む)は認められていません。ただし自治体によっては許可が出る場合があります。私自身、許可を得てアルバイトをしながら通所していました。ただし許可を出す自治体は少なめですし、両立は体力的にかなりきついので、シフトの調整は必須です。まずは自治体の障害福祉課に相談してみてください。
- Q. 通所中、生活費はどうすればいいですか?
-
就労移行支援からは工賃が出ません。前職で雇用保険に入っていたなら、まず失業保険を確認してください。障害者手帳があれば「就職困難者」区分になり、45歳未満なら最大300日です。ほかに障害年金、生活保護、住居確保給付金などの制度もあります。体調で30日以上働けない場合は、失業保険の受給期間を最長4年まで延長できます。退職したら早めにハローワークへ。
- Q. 障害者手帳がなくても利用できますか?
-
手帳がなくても、医師の診断書や意見書、自治体の判断で利用できるケースがあります。ただし自治体によって運用が異なるため、障害福祉課に相談するのが確実です。「手帳を取るかどうか」も含めて、窓口で相談しながら決めて大丈夫です。
- Q. 親が就労移行支援の利用に反対しています。
-
親世代には制度がまだ知られておらず、不安から反対するケースがあります。あなた一人で説得しようとせず、自治体の窓口・支援機関・主治医など、第三者を一緒に頼るのがおすすめです。利用料の判定に親の収入が入らないことや、就職実績などの客観的な情報を共有すると、納得してもらいやすくなります。それでも難しい場合は、前述の国の制度を使って自立の道を選ぶこともできます。
- Q. 合わない事業所は、すぐ辞めていいですか?
-
合わないなら辞めるという判断はあっていいと思います。自分の条件を妥協しなければいけない理由はありません。ただし、勢いで辞めるのではなく、次の事業所を見つけてから手続きを進めるのが理想です。退所〜再入所には1〜2ヶ月かかり、その間も利用期間は消費されます。私の場合は、前の事業所で揉めた経緯を理由に、次の事業所から慎重な対応をされました。「辞めれば次に行ける」とは限らない、というのが実感です。
- Q. 2年で就職できなかったらどうなりますか?
-
市区町村の審査を経て延長が認められる場合があります。ただし厚生労働省の資料では、利用者36,607人のうち2年以下が93.5%、2年超3年未満が5.9%、3年超は0.5%。延長を使えている人は1割にも届きません。延長や再利用の判断は自治体ごとにバラつきがあるとも指摘されています。延長は例外と考えて、2年以内に就職する前提で計画を立てるほうが安全です。
- Q. 引きこもり期間が長くても大丈夫ですか?
-
いきなり就職活動ではなく、生活リズムの立て直し→スキル訓練→就職活動と、段階を踏んで進められるのが就労移行支援です。最初は週2〜3日の通所から始められる事業所もあります。ただし対応の手厚さは事業所によって差があるので、見学のときに「ブランクのある方の受け入れ実績」を聞いてみてください。
まとめ——遠回りした40代の私から、時間のある20代のあなたへ
最後に、この記事で伝えたかったことをまとめます。
- 20代で就労移行支援を使うのは負けでも甘えでもない。対象年齢は18歳以上65歳未満、20代はど真ん中
- 「利用者の最多層は20代」という数字は使わなかった。出典を確認できなかったから。年齢構成は事業所ごとに違うので、見学で「20代はどのくらいいますか」と聞くほうが確実
- 利用料の判定に親の収入は入らない。18歳以上は本人+配偶者で判定。非課税世帯なら0円
- 2年はだらだら使えない。就職者の平均利用月数は15.9ヶ月。延長を使えているのは1割未満
- 事業所の差は公的データにも出ている。移行率0%が約3割強、20%以上が約4割。最初の1ヶ所で結果が変わる
- 見学では5つの質問を。特に「使える求人はどこのものか」「エージェントと併用できるか」は、私が聞かなかったせいで詰んだところ
- お金は制度で確保できる。失業保険は手帳があれば45歳未満で最大300日。親に頼れなくても障害年金・生活保護・グループホームという道がある
私は、事業所選びで大失敗しました。利用期間の壁にぶつかって、泣く泣く事業所を諦めました。何十社も落ちて、深夜に一人で不採用通知を開く夜もありました。それでも行動を続けた結果、契約社員からですが希望通りの転職にたどり着き、今は配慮を受けながら、正社員登用を目指して働いています。
振り返れば、遠回りばかりでした。でも、あなたは違う。私が一番欲しかった「時間」を、あなたはもう持っているんです。



支援を受けるのは、弱さじゃありません。戦略です。時間という武器を持っているあなたなら、私より早く、私より遠くまで行けます。
焦らなくていい。でも、立ち止まったままでいる必要もない。まずは事業所に見学予約を入れる。エージェントに無料相談してみる。その小さな一歩が、あなたの数十年を変えます。
私の遠回りを、あなたはショートカットしてください。
利用期間は2年しかありません。20代の2年は、使い方次第で武器にも浪費にもなります。
だから、見学に行く前にこれだけはやってください。
見学質問テンプレート10選つき






